「おにぎり全品20円引き」と「おにぎり100円均一」、どちらがお得に感じますか?
あるコンビニが、このフレーミング効果を使って売り上げを伸ばすことに成功しました。
「100円均一」のほうが、お得感ありますよね。
でも、ただ言い方を変えただけなんです。
今回は、フレーミング効果について、様々な具体例や実験を用いて解説していきます。
フレーミング効果とプロスペクト理論の関係や、メディアがどのように使っているかもご紹介。
これを読めば、ビジネス・恋愛・ブログに自分で応用できちゃいます。
㈱Woo代表。WordPressを魔改造してSEO戦争する人です。 WordPressプラグイン・テーマ「unify」開発者。 中央大学卒。元WEB系エンジニアでCMSやECサイト開発等をしてました。 2018年10月頃にブログ運営を開始。2020年独立し、2021年法人化。
フレーミング効果とは
論理的に等価の問題であっても、選択肢の表現の仕方や枠組みの違いが選好に影響する現象をフレーミング効果と呼ぶ。
( フレーミング効果 ─科学事典 より )
フレーミング効果とは、同じ意味を持つ情報でも見方次第で全く別の印象を与える効果のこと。
例えば、ある2人がテストで90点を取ったとします。
- Aさん:「テストで90点も取ったよ!」
- Bさん:「テストで90点しか取れなかった」
どちらの方が、高得点を取ったように感じますか?
この2人の言うことは同じ内容ですが、強調される部分が違います。
- 「テストで90点も取ったよ!」→90点の利益が強調される
- 「テストで90点しか取れなかった」→10点の損失が強調される
このように、物事を表現する枠組み(フレーム)を変えることで、与える印象も変わるんです。
フレーミング効果の実験
フレーミング効果は多くの研究者に注目されており、数多くの実験が行われました。
アジア病問題
フレーミング効果を実証する、最も有名な実験です。
ノーベル経済学賞の受賞者であるダニエル・カーネマン(Daniel Kahneman)と、共同研究者のエイモス・トベルスキー(Amos Tversky)により、1981年に発表されました。
アジア病問題
学生2グループに、選択肢を変えて以下の質問をする。
アジア病が流行すると、600人が死亡すると予想されている。
2つの対策案があるが、あなたなら案aと案bのどちらを選ぶ? |
〈グループAに出された案〉
- 案a:200人が助かる
- 案b:3分の1の確率で600人(全員)が助かるが、3分の2の確率で誰も助からない
〈グループBに出された案〉
- 案a:400人が死ぬ
- 案b:3分の1の確率で誰も死なず、3分の2の確率で600人(全員)が死ぬ
結果は、このようになりました。
グループAの回答 | グループBの回答 |
---|---|
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同じことを言っているにも関わらず回答率の違いが出たのは、「ポジティブな表現」と「ネガティブな表現」の影響があるためです。
2つのグループに出された案aは、生死の割合が一致しています。
この 2 つの表現において,一方の記述は他の意味合いを含んでいることから論理的には同一のことを述べていると考えることができるが,我々はこれらの表現を聞いた時に認知的には全く異なる処理を行い,ポジティブな表現を聞いた場合はネガティブな表現を聞いた時よりも対象へ好ましい評価をする
実験の案において、「助かる」と「死なない」、「助からない」と「死ぬ」は同じことです。
これらは言葉が持つ印象によって、「助かる」or「助からない」というポジティブな表現、「死ぬ」or「死なない」というネガティブな表現に分けられます。
ポジティブな表現を与えられたグループAでは、確率が確実である案aが好まれました。
一方ネガティブな表現を与えられたグループBでは、確率が確実ではない案bが好まれる結果です。
このことから、選択肢における表現法(フレーム)の影響をフレーミング効果と言うようになりました。
ダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーが実証して以来、実に多くの研究が発表されています。
中には、試験的な場面だけでなく、「日常の場面でも効果が現れる」と分かった研究もありました。
牛ひき肉の表記による実験
Levin & Gaeth (1988) は、牛ひき肉の質についての評価が、表記に依存することを示しました。
牛ひき肉の表記による実験
①同じ牛ひき肉を2つの表記に分ける。
A:「赤身75%」と表記
B:「脂身25%」と表記
②A、Bそれぞれの味を評価してもらう。
この実験の場合、Aがポジティブな表現、Bがネガティブな表現として働きます。
結果、Aの「赤身75%」と表記された方が、味が良く、脂っこくないと評価されました。
これまでの実験はポジティブな表現の方が選択されてきました。
しかし、反対に、ネガティブな表現が選択されるケースもあるんです。
乳がん検診での実験
アメリカのダートマス大学教授であるブーナン・ケラーが行った実験です。
乳がん検診での実験
- 被験者を2つのグループに分ける
- それぞれに以下のメッセージを出し、乳がん検診の受診を考えてもらう。
A:早期に発見できれば、治療の幅が広がります。
B:早期に発見しないと、治療の幅が狭まります。
実験結果は、乳がん検診を受ける人は、Bのメッセージを言われたほうが多くなったんです。
「〜しないと」というネガティブな表現が被験者の焦燥感を生み出し、行動に影響を与えた結果と言えます。
こうした『損を回避したい』気持ちが人間の行動選択に影響する心理はプロスペクト理論と呼ばれるもの。
フレーミング効果と非常に深い関係性があります。
フレーミング効果とプロスペクト理論
プロスペクト理論(プロスペクトりろん、英: Prospect theory)は、不確実性下における意思決定モデルの一つ。選択の結果得られる利益もしくは被る損害および、それら確率が既知の状況下において、人がどのような選択をするか記述するモデルである。
(中略)
人間は目の前に利益があると、利益が手に入らないというリスクの回避を優先し、損失を目の前にすると、損失そのものを回避しようとする傾向(損失回避性)がある
プロスペクト理論とは、表現に違いがある時、『損失を回避したい』という気持ちが行動選択に影響することです。
この『損失を回避したい』という気持ちは損失回避性と呼ばれ、フレーミング効果が働いた結果と言えます。
フレーミング効果の具体例
このようなフレーミング効果は、私たちの日常でも、多くの場面で起こります。
様々なパターンを例に、よく使われる言葉や表現を見ていきましょう。
時間
時間に対する感覚は、人それぞれ違うもの。
- 「あと30分しかない!」
- 「あと30分もある」
同じ30分という時間が、言葉1つで違う印象に。
この言葉の表現を応用すると、相手の印象にも影響が出ます。
例えば、遅刻に対して。
10時に集合をしている。
|
どちらも、「30分遅れた」という事実は同じです。
しかしAの場合、言った時間通りに到着しているため、「30分『も』遅れた」という印象が強くなります。
対してBの場合、11時に到着すると言っていたため、「30分『しか』遅れていない」という印象を受けるんです。
遅刻はしちゃいけないものですが、いざという時は時間を多く見積もっておくといいかもしれませんね。
ちなみに、このように、最初に提示された数字や条件が基準となって判断が左右されてしまうことをアンカリング効果と言います。
アンカリング効果については以下の記事で詳しく解説しています。
組み合わせて使うと◎なこの効果、ぜひ読んでみてください。
アンカリング効果とは?意味や例を解説|ビジネス・恋愛・ブログでの応用術高かった商品がセールになった時、つい手を伸ばしてしまうことはありませんか? これ、アンカリング効果という心理現象なんです。 例…
金額表記
実験で出てきた牛ひき肉の表記のように、金額もポジティブな表現を強調したものが良く売れています。
例えば、ダイエット食品。
80%の人が効果を実感!
こういう文言をよく目にしますよね。
損失は伝えず利得を強調することで、顧客もその高確率に入ることを期待するんです。
この金額表記を上手く利用したのが、コンビニ大手セブンイレブン。
それまでコンビニでは、セール品を「◯円引き」と表記するのが当たり前でした。
おにぎりの通常価格を120円とすると、「100円均一セール」は「20円引き」と同じです。
どちらがお得に感じるか、一目瞭然ですよね。
このセブンイレブンの戦略は、今ではどのコンビニでも取り入れる手法となりました。
勝敗
例えば、バスケットボールの試合がリーグ戦で行われたとします。
5試合を終えた戦績として、次のどちらが強いチームに感じるでしょうか。
- A:1勝4引き分け
- B:5戦無敗
1勝しか勝っていませんが、引き分けは負けではありません。
Bの方が、強いように感じませんか?
表現方法が変わるだけでかなりポジティブな変換ができます。
どこにフォーカスを当てるかが重要。
この例の場合、Aは「勝ち数」にフォーカスが向けられているため、「1試合しか勝てなかった」という印象を受けます。
対してBは、「負けていない」ことにフォーカスが当たっているんです。
『5試合やってこんなに負けが無いなんて』と、見た人はつい思ってしまいます。
フレーミング効果とメディアの関係
フレーミング効果とメディアは非常に深い関係にあります。
報道の枠組みを変えて呈示することで、視聴者が違った印象を受けるんです。
報道の枠組みの呈示の仕方によって視聴者に異なるインパクトが生じることをフレーミング効果と呼ぶ。同じ事件や事故でも、どこに重点を置き、どの視点で描くかによって、視聴者の受け取り方は変わってくる。
メディアが報道を扱う場合、2種類のフレームがあります。
メディアが扱う2種類のフレーム
①エピソード型フレーム
個々の具体的な事例を描く報道の枠組み。
②テーマ型フレーム
統計データや政府の政策といった抽象的な内容を描く報道の枠組み。
①のエピソード型フレームは、テレビなど映像中心のメディアが多く使用。
このエピソード型フレームでは、問題の原因や責任が当事者(=個人)に向きやすくなります。
例えば、「窃盗容疑」のニュースが放送される時。
目撃者や、被害にあった店などへのインタビューが映るパターン、よくありますよね。
これらのエピソードによって、視聴者は容疑の段階でありながら犯人を確信するんです。
前項目の勝敗の例にもあったように、「視聴者にどう思わせたいか」によってフレーミング効果の影響も変わるということです。
フレーミング効果を、メディアが駆使しない手はありません。
フレーミング効果を応用するには
ビジネスで活用する方法
ビジネスで活用するには、売り出したいものの属性を見分けることが大切。
ポジティブ表現とネガティブ表現を使い分けましょう。
生活・娯楽・嗜好に関するもの
多くの商品やサービスがこの属性に当てはまります。
生活・娯楽・嗜好に関するものは、利益を強調したポジティブな表現で宣伝すると◎。
以下の例をご覧ください。
- A:顧客満足度85%!
- B:15%の方には満足いただいておりません。
わざわざBのように話すことはありませんよね。
また、価格についてのアピールも、ポジティブな表現に変えることでよりお得感を出せます。
- A:通常価格(1万円)から20%割引
- B:2,000円分無料
さらに、「割引」よりも「無料」のほうが顧客は反応します。
Bは数字の桁が多いため、『こんなにお得になる』と感じやすいんです。
対策・予防に関するもの
ダイエット食品や薬など、対策・予防に関するものは、損失を強調したネガティブな表現で宣伝しましょう。
例えば、こんな感じ。
- A:シミ対策に効果的!
- B:そのシミ、放っておくと年々濃くなっていきます。
Bのように言われると顧客は焦りに近いものを感じます。
『買って予防(対策)しなければ』という思いが購入に繋がるんです。
恋愛で活用する方法
恋愛でも、言い方を変えることで相手の気持ちが変わります。
例えば、以下の2人、どちらのお願いを聞きたいと思うでしょうか。
- Aさん:「遠いから迎えに来てくれないとダメ」
- Bさん:「免許がないから迎えに来てくれたら嬉しいな」
Bさんなら、『迎えに行ってあげようかな』という気持ちになりませんか?
このように、恋愛ではポジティブな表現を使ってフレームを変えるのが重要です。
デートのお誘いをする時
- ☓「デートしてほしいんだ」
- ○「連れていきたいところがあるんだよね」
タイプの話をする時
- ☓「身長差は20cm以上ないと嫌」
- ○「(女の子が)見上げるくらいの身長差がいいな」
相手を励ましたい時
- ☓「そんな落ち込まないで」
- ○「笑わせたいな」
「ダメ」「嫌」「〜ない」などのネガティブワードを使わないよう、意識するだけでもだいぶ違うでしょう。
ブログで活用する方法
ブログでも、アピールしたいことをポジティブな表現で強調するのが効果的。
例:10,000円のサブスクの30%OFFの時
今登録すれば、飲み会1回分が無料になるんです。
無料が強調されるため、30%OFFと言われるよりお得感が出ます。
また、「飲み会1回分」って、結構お金かかるように思えませんか?
『そんなにお金が浮くんだ』と実感することで、より購入に繋がりやすくなるんです。
【ブログで使える心理学:フレーミング効果】
何となく知ってても、ブログで使われないやつ。
でも、意識して使うとかなり差がつくんじゃない?#ブログ初心者 pic.twitter.com/tx0tsBs1MT— ドム@SEOとunify開発の人 (@domblog_jp) April 11, 2021
フレーミング効果は、他の効果との組み合わせにもとっても使えます。
ブログで使える心理学を色々まとめているので、ぜひ見てみてください。
まとめ
この記事のまとめ
- フレーミング効果とは、物事を表現する枠組み(フレーム)を変えることで、与える印象も変わること。
- フレーミング効果には、利益を強調するポジティブな表現と、損失を強調するネガティブな表現が使われる。
- フレーミング効果をビジネスに応用するには、商品の属性とフォーカスによって2つの表現を使い分ける。
- フレーミング効果を恋愛・ブログに応用するには、言葉の変換によってポジティブな表現で強調する。
フレーミング効果は、ポジティブな表現とネガティブな表現によって相手の印象を変えることができる便利な心理効果。
文章勝負のブログでも、読者に良い印象を与えたいものです。
(テレビショッピングなどを見ると、いいことしか言ってないので結構参考になりますよ。笑)