りんメディアディレクター
おとり効果とは?実例や実験から解説|ビジネス・恋愛・ブログでの応用術
「買うつもり無かったのに、つい買っちゃった」って経験、1度はありますよね。
もしかしたらあなたは、おとり効果を使った戦略に乗せられていたかも。
比較した商品の中に、あなたをレジへ向かわせるための「ダミー」が存在していたんです。
今回は、おとり効果について、実例や実験から分かりやすく解説。
組み合わせるとより効果的な「松竹梅の法則」や、自分で応用する際のポイントもお話していきます。
行動心理学の活用法を発信している私が、相手に「選ばせる」テクニックも紹介します!
この記事の監修者
ドム(工藤逸世)SEOコンサル&WPテーマ開発
㈱Woo代表。WordPressを魔改造してSEO戦争する人です。 WordPressプラグイン・テーマ「unify」開発者。 中央大学卒。元WEB系エンジニアでCMSやECサイト開発等をしてました。 2018年10月頃にブログ運営を開始。2020年独立し、2021年法人化。
おとり効果とは?
おとり効果 (英:decoy effect、またはattraction effect or asymmetric dominance effect)とは、マーケティング用語の一つ。2つの選択肢の間でどちらにしようか迷っている消費者に対して、「どちらかに対して明らかに劣った」第3の選択肢(おとり選択肢)を提示した場合に、消費者が特定の選択肢を選ぶようになる傾向がある現象である。
おとり効果とは、明らかに劣ったものを選択肢の中に入れることで、人の意思決定が変わる効果のこと。
例えば、売り出したい自社製品「商品A」に対して、ライバル製品「商品B」があったとします。
消費者は、甲乙付け難い商品のどちらを買うか迷いどころ。
そこで、「商品A」よりも劣った「商品C」を投入するんです。
各商品のスペックは、10点満点で比べるとこんな感じ。
商品A | 商品B | 商品C |
---|---|---|
機能1:8点 機能2:10点 |
機能1:9点 機能2:5点 |
機能1:8点 機能2:8点 |
消費者は「>」(この商品よりもいい)で順位を付けていきます。
この場合、どの商品よりも優れているとは言えず、機能2が大きく劣る「商品B」は、消費者に選ばれづらくなるんです。
こうなると、「商品A」が1番に選ばれるのは言うまでもありません。
結果的に「商品C」は、選ばれることがほとんど無い「おとり商品」になります。
つまり、おとり効果を使えば「選ばせたいものを選ばせる」ことができちゃうんです。
おとり効果の実験
おとり効果の実験は様々な研究者によって行われました。
その中から、ここでは2つの実験をご紹介します。
雑誌を使った実験
アメリカの行動経済学者ダン・アリエリーのベストセラー「予想通りに不合理」で紹介された実験です。
この実験は、アメリカの雑誌「エコノミスト」のサブスクリプション広告画面で、実際に使われていました。
学生に以下の選択肢を与え、エコノミスト誌の定期購読を促し、どの選択をしたかを検証しました。
検証1 | 検証2 |
---|---|
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実験の結果は、以下の通りでした。
〈検証1〉の分布 | 〈検証2〉の分布 |
---|---|
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「web版の購読」「冊子&web版の購読」はどちらの検証でも同じ条件でしたが、結果が正反対の分布となりました。
この実験で鍵を握るのは、〈検証2〉で追加された「冊子版の購読」の選択肢。
〈検証2〉で「冊子版の購読」を選択した人の割合は0%で、一見すると要らないようにも思えます。
しかし、「冊子版の購読」と「冊子版&web版の購読」の値段が同じ125$のため、比較することで③の方が断然お得に感じるんです。
つまり「冊子版の購読」は、本当に買ってほしい商品を選ばせるためのおとりであり、比較することで効果が発揮されたと考えられます。
消毒液を使った実験
2018年、コロラド大学デンバー校と中国科学院の研究者が発表した実験です。
消毒液を使った実験
中国3つの食品工場で、168人の労働者を対象とする。
- 始めの20日間、消毒液をスプレーボトルに入れ、労働者に使ってもらう。
- その後、スプレーボトルの隣に選択肢を増やす。
- スクイズボトル(スポーツをする人が使うような水筒)に入った消毒液
- 洗面器に入った消毒液
労働者が消毒をする割合を検証する。
検証を行ったところ、スプレーボトルで消毒をする人が60%から90%に増えました。
スプレーボトルの他に、おとりの選択肢を与えた結果と言えます。
おとり効果はなぜ起こるのか
ではなぜ、おとりがあることで意思決定が変わってしまうのでしょうか。
そこには私たちの「比較して選ぶ」性質が深く関係しています。
わたしたちはものごとをなんでも比べたがるが、それだけでなく、比べやすいものだけを一生懸命比べて、比べにくいものは無視する傾向がある。
―ダン・アリエリー著「予想どおりに不合理」より
例えば、 次の選択肢では、どれを選びますか?
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この3つを見たとき、無意識に「肉」同士で比べたのではないでしょうか。
逆に、「肉」と「卵」、「g」と「個」だと、いまいちピンと来ません。
このように人は、同じカテゴリーや単位で物事を比較しやすく、逆に異なるもの同士は比較対象にしづらいんです。
これにおとり効果を加えると、意志決定が変わってきます。
例えば、豚肉を1番に選ばせたい場合。
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このように「牛肉」と「卵」の間の値段だと、「豚肉」が目に入りませんか?
料理にどのお肉を使ってもいい人なら、『豚肉で作ろうかな』と思うかもしれません。
ちなみに、この例のような値段設定には、松竹梅の法則というものがよく使われます。
「おとり効果」との相性◎な「松竹梅の法則」について、次の項目で解説していきます。
おとり効果と松竹梅の法則
おとり効果とよくセットで使われるのが、「松竹梅の法則」。
消費者に選ばせたいものがある時、値段設定に使うテクニックです。
松竹梅の法則とは
商品価格が3つ以上のグレードに分かれて用意された場合、消費者は真ん中を選ぶとされる法則。
例えば、幕の内弁当や、ちょっといいとこの定食メニュー。
よく「松・竹・梅」で分かれていませんか?
「梅」は1番安いけれど、なんだか物足りない気がする…
「松」は豪華だけれど、値段が高い…
消費者にとって、真ん中の「竹」は1番ちょうど良いんです。
おとり効果と松竹梅の法則は、マーケティングではよく用いられる戦法。
私たちの日常生活でも、この戦法によって「選択させられている」ことが実はたくさんあります。
次の項目で、実際に使われている例を見ていきましょう。
おとり効果と松竹梅の法則の組み合わせ方を、実例と共に説明します。
おとり効果の具体例
売りたい商品を狙いどおりに売る方法、いったいどんなものでしょうか。
具体的な例が分かれば、自分で応用する方法も見えてきます。
スマホ
Wikipediaで紹介されている「スマホの例」を、分かりやすく解説します。
消費者はスマホの購入を検討する時、以下の2点をメリットとして重視します。
- 容量(ギガ数)が多いこと
- 価格が安いこと
例えば、最新型スマホ(「A-Phone」とします)が発売された場合、消費者は以下のように従来品(「B-peria」とします)と比較します。
A-Phone | B-peria | |
---|---|---|
価格 | 40,000円 | 30,000円 |
容量 | 30ギガ | 20ギガ |
容量で選べば「A-Phone」、値段で選べば「B-peria」と、消費者が分かれます。
しかしこの比較では、「A-Phone」を選ぶ人と「B-peria」を選ぶ人の割合に大差は出ません。
ここで「おとりスマホ」を追加投入するんです。
「A-Phone」を売り出したい会社が、「A-Phone XR」も同時に発売したとしましょう。
「A-Phone XR」は、同じく最新型ではありますが、スペックは微妙な製品です。
3商品を比べると、こんな感じ。
A-Phone (売りたい製品) | B-peria (競合製品) | A-Phone XR (おとり製品) | |
---|---|---|---|
価格 | 40,000円 | 30,000円 | 45,000円 |
容量 | 30ギガ | 20ギガ | 25ギガ |
この「A-Phone XR」、買う人はほとんどいないと予想されます。
価格はどのスマホよりも高く、容量ももっといいものがあるからです。
つまり、「A-Phone」に注目させるための「おとり製品」。
価格は3商品の真ん中でちょうどよく、容量はどれよりも多いため、消費者は「A-Phone」に魅力を感じるようになります。
逆に、「B-peria」を売り出したい場合も考えてみましょう。
「A-Phone 」と「B-peria」よりも容量が少なく、値段は2商品の間である「B-peria Z」が投入されたとします。
A-Phone (競合製品) | B-peria (売りたい製品) | B-peria Z (おとり製品) | |
---|---|---|---|
価格 | 40,000円 | 30,000円 | 3,5000円 |
容量 | 30ギガ | 20ギガ | 15ギガ |
「B-peria Z」の結果は先程と同じ。
全ての点において「B-peria」よりも劣っているため、購入する人はほとんどいません。
しかし、「A-Phone」と比較するとどうでしょう。
容量は半分と随分劣りますが、価格は「A-Phone」よりも安くなっています。
つまり「B-peria Z」は、順位で並べた時に敢えて2番になるようなスペックで、本当に売り出したい商品が1番に見えるように出されているんです。
このように「おとり商品」があれば、競合商品と比較させて売りたい商品を売ることができます。
コース料理
先程の「松竹梅」の価格設定を応用したのが、コース料理のメニュー欄です。
例えば、こんな風に書かれているメニューがあったとします。
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この2つの選択肢だと、『料理は単品でも頼めるし、ドリンクくらい無くてもかな』と、②を選ぶ人も大勢出てくるでしょう。
これをコースで3つの選択肢にすると、選び方が変わってくるんです。
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Bコース、なんだかお得に感じてきませんか?
「真ん中」があることで、選ぶ人は程よい妥協ができるんです。
これでBコースを選ぶ人がぐんと増え、お店自体の売り上げもUPします。
おとり効果を応用するには
おとり効果を応用すれば、私たちのあらゆる日常シーンで相手の意志決定を変えることができます。
ここでは、ビジネス・マーケティング・恋愛・ブログに応用する方法をご紹介。
まずはおとり効果を使用する際のポイントから見ていきましょう。
おとり効果を使用するポイント
①比較対象は多すぎNG
比較対象が多すぎるとそれほど考える量も増えます。
そのため、人は選んで失敗するリスクを避けようとするんです。
3つくらいの選択肢であれば、「真ん中」を選ぶことで失敗のリスクは回避できます。
しかし、例えば比べるものが10個あると、どれがちょうどいい真ん中になるのか分かりません。
この結果、選ぶこと自体をやめてしまうのです。
②選択肢は3or5がベスト
日本人は、偶数よりも奇数のほうが興味を引きやすいと言われています。
「奇数の法則」と言い、マーケティングでもよく使われているんです。
分かりやすいのが、今の時代よく聞く「3密」。
これが2密とか4密だったら、いまいちスッと入ってきませんよね。
ブログの記事タイトルなどでも、「人気の○○10選」よりも、「人気の○○11選」の方がクリック率が上がります。
先程の①も考慮すると、選択肢は3か5で与えるとグッド◎。
選ぶ側が順位を決めやすく、頭にも入ってきやすくなります。
③価格設定は5:3:2
価格設定で重要になってくるのは、各選択肢の「差」。
松竹梅で言えば、「松5:竹3:梅2」がちょうどいいとされています。
『松には手を出せないけれど、梅よりちょっといい』と、竹に魅力を感じさせるのがポイントです。
ビジネス・マーケティングでの活用法
おとり効果の具体例やポイントを踏まえると、ビジネス・マーケティングでの活用法は以下の通り。
- 「おとり商品」を出し、売り出したい商品が1番になるように比較させる。
- 顧客に提供する選択肢は3つ、多くても5つ。
- 価格設定は「松5:竹3:梅2」
この3つを実践するだけで、商品やサービスの売り上げにかなり差がでます。
上記で挙げてきた例を参考に、売りたいものの価格設定を見直してみましょう。
恋愛での活用法
恋愛でも、「おとり」が効果的なんです。
ダン・アリエリーが「恋愛でもおとり効果は発揮されるのか」検証した実験でも、「ちょっと劣っている人と並ぶとより良く見える」結果が出ています。
ちょっとズルいやり方ですが…
合コンや婚活に、あえて可もなく不可もない普通の人を連れていくと、自分への評価は上がります。
ただこれを露骨にやると性格が悪いので、「一緒に行く人はさりげなく選んだ方がいい」という話です。
また、おとり効果を使って、相手自身に選択肢を作らせることもできます。
例えば、片想いの相手の気持ちを確かめたい場合、こんな質問が使えます。
私(俺)に好きな人がいたらどうする?
すると相手は、こんな選択肢を考えるんです。
- 応援する
- 応援する前に気持ちは伝えておく
- 誰かに取られる前に付き合う
相手が自分のことを好きなら、多くの人が②、③あたりを考えるでしょう。
ただし、ただの友だちである場合や、相手が優しすぎて身を引いた場合は、①に終わってしまうリスクも。
どちらにせよ相手の気持ちを知りたい、という人におすすめです。
ブログでの活用法
ブログで活用する場合は、上位互換を忍ばせるとグッド◎。
例えば、A商品のほうが新しいなどの理由で売れているが、性能はB商品と変わらない場合。(A商品が上位互換)
両方をおすすめ商品として売り出すといいんです。
性能が変わらないB商品と比べて、A商品のほうが優れる点により注目がいきます。
つまり、比べることによって商品の良さが際立つということ。
A商品のみ紹介するよりも抜群に売れ行きが良くなります。
SEOコンサル&WPテーマ開発
ドム(工藤逸世)のコメント
ここまででご紹介している「おとり公開」は、私のツイートでまとめています。
【ブログで使える心理学:おとり効果】
— ドム@SEOとWEB開発 (@domblog_jp) March 2, 2021
「これ、絶対買う人いねーよ」って商品😐
どのジャンルにもあると思うけど、
運営視点では使えるよってお話。#ブログ初心者 pic.twitter.com/S1o6RLbnsg
SEOコンサル&WPテーマ開発
ドム(工藤逸世)のコメント
「商品価格に差をつける(応用)」ってところが、松竹梅の法則と組み合わせている例です。
この他にも、組み合わせられる心理効果をTwitterでたくさん紹介してるので是非チェックしてみてください!
特にブログを書く人は、いろんな心理効果の組み合わせで自分なりの文章が固まってくるはず。
いずれ記事でも詳しく書いていきますが、見て損はありません。
まとめ
この記事のまとめ
- おとり効果とは、明らかに劣ったものを選択肢の中に入れることで、人の意思決定が変わる効果。
- おとり効果をビジネス・マーケティングに使う時は、松竹梅の法則を用いて「松5:竹3:梅2」の価格設定にするのが◎。
- おとり効果を恋愛で使えば、相手自身に選択肢を作らせることも可能。
- おとり効果をブログで使うには、上位互換を忍ばせる。
ドムさんのツイートにも書いてますが、おとり効果はブログの運営者視点ではかなり使えます。
特に商品紹介などは、上記で書いてきた例のように他商品と並べると読者が比較しやすいんです。
レビュー表とかを載せて比べさせるのも相乗効果が期待できますね。
おとり効果を賢く使って売りたいものを選ばせていきましょう!